30代で自衛官になるメリット・デメリットについて元自衛官が解説します。
30代で自衛官になるかどうか迷ってるって方は参考にしてみてください。
30代で自衛官になるってどうなの?
結論から言うと、30代で自衛官を目指すのはある程度の覚悟が必要です。
その理由を説明すると同時にじゃあどうすればいいのか?もお話しします。
おそらく30代で自衛官を目指そうと思っている方は今の勤め先が
- 給与が少ない
- 昇給がない
- ボーナスが雀の涙
- 正社員じゃない
- まともな職歴がない
- ブラック企業で働いている
といった方々が多いと思います。
そのため次のような待遇に惹かれているはずです。
- 国家公務員の地位
- 給与が安定している
- ボーナスあり
- 年間休日120日以上
- 福利厚生
この気持ちはものすごく分かります。
その上自衛官は長引く少子化、士の不足によって採用上限が引き上げられました。
ここ何年かで「自衛官候補生」と「一般曹候補生」の募集対象は18~32歳となり、
30代であっても特別職国家公務員である自衛官になるチャンスができたわけです。
このチャンスに賭けたいという気持ちは正常です。
なぜ30代から自衛官はオススメできないのか
では、どうしてherが30代から自衛官になることをオススメできないのかというと、
自衛官に採用=正社員じゃないからです。
自衛隊に向いている人、向いていない人についてガチで解説してみた
確かに自衛官候補生や一般曹候補生として入隊すれば士長まではなれますが、問題はこの先です。
その問題とは、自衛官候補生にしろ一般曹候補生にしろ将来的に自衛官として働きたいのであれば、3曹になる必要があることです。
3曹とは、自衛官として定年まで勤務するのに最低限昇任しなければならない階級のことです。
防衛省では、
曹の役割については、従来から、小部隊のリーダー及び専門分野に精通した技能を有するものであるとともに、士を直接指導し、幹部を補佐する部隊の基幹要員として位置付けられています。
その資質・能力は部隊の精強性等に大きな影響を与えます。さらに、任務の多様化、装備の高度化に伴い、より高い専門性が要求されることから、曹としての任務遂行に必要とされる高い能力が求められています。
と定義されており、小部隊のリーダーとして士への指揮命令(リーダーシップ)、幹部の補佐(現場の任務遂行)といったスキルが求められます。
3曹の昇任試験には、学科、体力検定、分隊教練、射撃、面接、応急等があります。
また、当たり前の話ですが3曹になるのは狭き門です。
一般曹候補生で3曹への昇任試験を受けるのにもこれだけの期間がかかります。
- 自衛官候補生:約2年7ヶ月
一発で3曹の試験に受かることはまずありません。
自分の先輩、同期、後輩がライバルとなります。
18歳で入隊して25ま歳でに3曹になれれば御の字くらいの環境です。
厳しいことを言いますがこれが現実であり、これに太刀打ちできるかどうかが大事なポイントです。
地元の広報官は「一般曹候補生なら3曹になれるから大丈夫、受験回数の制限もないから」と表面的な事実しか言いませんが、信じてはいけません。
彼らにもノルマがありますし、何人採用させたかによって賞与の評価も大きく変わります。
いきなりこのようなお話をしてびっくりされる方もいらっしゃると思いますが、ここの読者の方には自衛隊に入って後悔してほしくないです。
だからこそ都合のいい話ばかりではなく、デメリットもお話します。
自衛隊っていくら給与出るの?
自衛隊では年齢に関係なく完全に階級社会となっているため、階級と号棒によって給与が決まっていきます。
一番最初に駆け出しの自衛官(2士)として入隊した場合の給与は、
- 月給:172,000円(2019年)
になります。
だいたい民間の高卒1年目と同じくらいです。
これに年2回(6月、12月)の賞与(ボーナス)がつきます。
ボーナスは夏冬合わせて約4.5ヶ月分でます。
勤務を続けていくと、自動的に2士→士長までは階級が上がっていきますので、
士長の時点で給与は、
- 月給:186,800円(2019年)
になります。
30代でこの給料だときついです。
入隊して1〜2年目は280万ももらえれば良い方なのではないのでしょうか。
ちなみに3曹に昇任して1年目の年収が約300万ちょっとです。
それに対して日本のサラリーマンの平均年収が400万円前後であることを考えると、自衛官は3曹になってから10年以上勤めないと割りに合わないことが容易に想像できると思います。
なので30代で自衛官に転職しようかどうか迷っている人は、それぞれのメリット・デメリットを認識する必要があるわけです。
メリットとしては、
- 特別職国家公務員なので給与が安定している
- 景気に左右されない
- 衣食住の費用がかからない
デメリットとしては、
- 「曹」になれるか分からない
- 30代で10代、20代と一緒に仕事をしなければならない
- 上官が年下になる
といったところになります。
待遇や安定のみを求め、生半可な気持ちで自衛官に転職するのはオススメできません。
それはただのギャンブルです。
どうすればいいのか?
ほとんどの方は自衛隊は国家公務員だし給与も安定していてボーナスもしっかり出る。
ここに惹かれていると思います。
ですが3曹になれるのは本当に自分に実現可能な範囲なのか?とよく考える必要があります。
もし上場企業でそれなりの給与・賞与がもらえるなら自衛隊じゃなくてもいい、と思えるなら他の選択肢を考えた方がいいです。
ちなみに僕も一般曹候補生として入りましたが、結果として3曹になることができず辞めました。
採用試験に合格=正社員じゃないと気づいたのは部隊配属後です。
もし仮に上記のことを事前に知っていたらな自衛隊を受けることはありませんでした。
完全なリサーチ不足です。
30代の方が自衛官以外の道を選ぶとしたら、絶対に正社員にしてください。ラストチャンスです。
自信を持っておすすめできる進路が2つあります。
期間工から正社員になる
期間工ということばをあまり聞いたことがないかもしれませんが、要は契約社員から正社員を高確率で目指せる求人が稀に存在します。
自衛隊と同じで身体を使う仕事です。たとえばこのブリヂストンの求人ですと、3年後には95%の方が正社員になっています。100人中95人が正社員になれるのは本当にすごいです。
自衛隊では100人中95人が3曹になれるなんてありえません。
大手タイヤメーカーのブリヂストンの正社員は平均年収686万円になります。(DODA)
ボーナスは年平均5.5ヶ月です。
自衛隊の曹で一番上の階級である曹長でも40歳を超えてようやく600万を超えてくるくらいです。
自衛隊の幹部クラスの年収が期待できます。
30代の方であれば未経験からでも採用されます。
株式会社ブリヂストン
こちらの記事にて解説しています。
期間工から正社員になるには? 約103件の求人から正社員登用実績のあるメーカーを年齢別に紹介
日総工産の技能社員(正社員)
上場企業でそれなりの年収・福利厚生があればいいって方は日総工産をおすすめします。
日総工産は上場企業であり、ここの正社員として製造業の仕事に就くことになります。
日本はものづくり国家と言われるだけあって製造業の年収は高いです。
入社時から正社員なので自衛隊のような3曹への昇任試験もありません。
また、職歴がない20代、30代であっても大丈夫です。
上場企業なので資本が莫大にあり、常に仕事に溢れているので雇用が創出されています。
ここで職歴をきっちり作ってキャリアを築いていく方がリスクも少なくはるかに現実的です。
日総工産の技能社員(正社員)とは? 年収や賞与、仕事内容に迫る
転職そのものはリスクですが、転職活動自体にはリスクがありません。
複数の選択肢を比較して最良の決断を行うのがベストです。
自衛隊に入りたい=入隊試験に合格すればいい、と多くの方は考えていますが大切なのはそこから5年、10年後のキャリアです。
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