幸せな選択、不幸な選択 レビュー

突然ですが、あなたはいま幸せですか?

この問いかけにあなたはどう答えますか。

「やりたいことができて幸せ」、「お金には困ってないけど目的がないから不幸」といったように、答えはさまざまだと思います。そして幸せの基準そのものも人によってばらつきがあります。

あなたは次のうちどちらが幸せだと思いますか?

  • 銀メダルVS銅メダル
  • 広いけど周囲が騒がしい家VS狭いけど周囲が静かな家
  • 1日のはじまりに嫌な会議VS1日の終わりに嫌な会議

そもそも幸せとは何なのでしょうか。

今回は、行動科学に基づいて幸福を明らかにしていきましょう。

そして私たちがよりよく生きるためには何が必要なのか知ってみましょう。

今回はポール・ドーランの『幸せな選択、不幸な選択』を読んでいきます。

ポール・ドーラン

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの行動科学教授

過去にノーベル経済学賞受賞ダニエル・カーネマンの招聘によりプリンストン大学で研究員を務め、論文を共同執筆している。英国家統計局および米国科学アカデミーに対し、国民調査で幸福度を測定する手法について助言している。

幸福とは何か

ポールドーランさんによると、

  • 幸福とは、快楽とやりがいが持続している状態

そしてこの法則を「快楽とやりがいの法則」―PPP(Pleasure-Purpose-Principle)と呼んでいます。

では、幸福とやりがいのバランスを維持するためにはどうすればいいのでしょうか

その答えとしてポール・ドーランさんは、

突き詰めれば、とても大きな快楽とやりがいをできるだけ長く経験していられるような、時間の使い方を追求すればいい。

過ぎ去った時間を取り戻せないように、失った幸福も取り戻せない。

つまらない仕事や厄介な恋愛関係にとどまっているのは不幸を引き延ばしにしているだけで、たとえその後幸せになったとしても、この損失を完全に埋め合わせることなどできないだろう。

失った幸福は永遠に失われたままなのだ。

と述べています。

そして興味深いことに、年齢によって学生時代の過ごし方に対する評価も違うそうです。

  • 大学生が前回の冬休みについて感じた後悔
  • 卒業生が40年前の冬休みを振り返って感じた後悔

この二つを調査してみたところ次のことが明らかになりました。

  • 学生たちはちゃんと勉強しなかったことを後悔し(やりがいのある活動をしておけばよかった)
  • 卒業生たちは40年前に思いっきり遊んでおかなかったことを後悔していた(快楽に満ちた活動をしておけばよかった)

このことから分かるのは、直近の後悔やはるか昔の後悔に気を病むよりも、いま快楽とやりがいのバランスの取れた時間を過ごすことを優先したほうがいい、ということです。

つまり、快楽とやりがいのバランスが取れていれば、おまけとして後悔も少なくなりがちになります。

では、この快楽とやりがいのバランスは私たちの日常でどのように使うことができるのでしょうか。

将来のために今の幸福をあきらめることについて

みなさんは将来のためにいまの幸福をないがしろにしたことがありますか?

言い換えれば、目的を達成するためにいまの幸福を犠牲にすることです。

これは「遅延満足」と一般的には言われているそうです。

将来の大きな幸福のためにいまを犠牲にすることについてポール・ドーランさんは、以下のように述べています。

将来の大きな幸せのために、ちょっとした幸せな時間をあきらめることもあるだろう。

例えば、不幸な結婚は離婚への第一歩だが、とりわけ片方が相手よりも著しく不幸を感じている場合には、たとえ結婚1年目でも離婚する可能性が高く、幸福度の差が時とともに広がっていくようならなおさらだ。

ただ、少なくともイギリスでは、夫婦の絆が壊れてしまっているなら、離婚したほうが、本人たちおよび成人した子ども(18歳から30歳)は幸せが強まることがわかっている。

また、タバコの量を減らすことによって、短期的には不幸になるかもしれないが、長期的にみれば、それによって健康などさまざまなメリットを手に入れて、より幸福になれるだろう。

のちにメリットが得られるなら、いま不幸せでもかまわないかもしれない。

大切なのは、幸福を時間の次元で考えることだ。

では、幸福な状態でいるために私たちはどうするべきなのでしょうか

幸福をもたらすもの

ポール・ドーランさんによると、私たちが幸福を生み出すにあたって大切なことは、

  • あなたの注意を割り振る(配分する)作業

になるそうです。

そして幸福を生み出すためのインプットは、私たちの注意を奪い合う非常に多くの刺激になるそうです。

この記事を読んでいるあいだにも、スマホやテレビを見たり、いったん別のことをしたりと、注意を奪おうとする刺激があったはずです。

私たちが幸福になるためには、

自分を幸福にしてくれるものに多くの注意を払い、そうでないものにはそれほど注意を向けない

ことが重要になってきます。

まとめ

簡単にまとめると、私たちが幸福になるためには次のことが大切になってきます。

  • 幸福とやりがいがバランスよく維持されるようにする。
  • 将来のためにいまの幸福をあきらめる場合には、その価値についてよく検討する
  • 自分を幸福にしてくれるものに多くの注意を払う

このようにしていけば幸福になれるそうです。

ですが、現実的な問題として、私たちの身の回りには、

  • 幸せになることを邪魔する注意の障害物

があります。

本書では、それが誤った願望、誤った予測、誤った思い込みとして紹介されています。

つまり、幸福になるためには、幸福になれる要素だけではなく、幸福を妨げる要素も理解しておく必要があるということです。

そして本書では、幸福を妨げる3要素を解説することで、

  • 偽りの幸せと厳しい現実
  • その目標はふさわしいのか?
  • 人は思い込みに合わせて行動を修正する

などといった、私たちがついつい陥りがちな思い込みや行動についてわかりやすく教えてくれます。

これから起こる人生の中で幸せな選択をしていきたい方、

そして、

行動科学で最高の人生をデザインする方にはオススメの一冊です。

この本の評価
読みやすさ
(4.5)
面白さ
(5.0)
デザインの美しさ
(5.0)
値段
(2.0)
コレクション性
(4.5)
総合評価
(4.5)
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