科学的な外国語学習法 レビュー

あなたはこれまでにどんな方法で英語を勉強してきましたか?

思い出してみてください。

このような間違った方法・考え方で英語を勉強してきませんでしたか。

  • 発音はだいたいでいい
  • 英文和訳と和文英訳をする
  • 外国語は暗記物
  • 辞書は何回でも引け!
  • 表現さえ覚えれば外国語は話せる

これらの点にひとつでも引っかかりを覚えたあなたはぜひ続きを読んでみてください。

今回、読み進めていくのは、佐伯知義さんの『科学的な外国語学習法』です。

佐伯知義

1933年、東京都生まれ。

早稲田大学フランス文学専修卒業、パリ大学、パリ大学付属音声学研究所、フィレンツェ大学などでビジネスを行う。

言語教育学者、評論家、アムネステイ・インターナショナル会員でもある。

著書:「ヨーロッパ再発見」、Le premier livre de français pour les Japonais「日本人のためのフランス語」

外国語学習は、神経回路の組織化

はじめに、みなさんは外国語学習とは、何をすることだと思いますか?

私を含め、多くの人たちは文法を習い、単語を覚え、テキストを読むこと、と答える人がほとんどだと思われます。

ですが、著書の佐伯知義さんによりますと、外国語学習とは、神経回路の組織化だそうです。

具体的には、学習を通して、2つ、または、それ以上のニューロン(神経回路)を結びつけていくことです。

そしてそれらが記憶として定着するには反復刺激が必要になってくるそうです。

この反復刺激ー復習ーの必要性に対して佐伯知義さんは、多くの方が認めていることを承知の上で、まだ回数が少なすぎると言っています。

反復学習の回数は、みなさんの想像を絶するほど多くなければならないそうです。

そしてその作らなければならない神経回路の数と種類は、単語や文法の規則の数だけ必要になるそうです。

それでは、外国語を勉強していく上で、私たちが犯しやすい間違いを見てみましょう。

外国語の学習の間違い

発音なぞどうでもいい

外国語を学習する上で、発音を軽視しがちなのは、私たちが外国語を勉強する目的は、

「外国語で書かれたテキストを読めるようになること」、と考えているからだそうです。

その上で著者はすべての現代語の学習では、まず発音を学ばなければならないと言っています。

なぜでしょうか? その理由は次のとおりです。

  • 欧米人は目で本を読む日本人とちがって音で本を読む
  • そのためヨーロッパの言葉で書かれた本は、口と耳で読む必要がある。

もう少し踏み込んだ話をしますと、表意文字か表音文字かのちがいだそうです。

ですがわかりにくいので、以下のようなイメージをもってみてください。

日本語では、重要な意味をもつ言葉に、漢字が用いられ、カナは漢字を助ける役目を担っている。これは日本語の大きな利点で、漢字を拾い読みするだけで、大意が分かることを意味する。

対してヨーロッパの言語の文章では、すべての単語に目を通して、発音しなければならない。

たとえば、アルファベットは、表音文字なので、書かれた文字を発音できなければ、意味が分からない。

諸悪の根源;英文和訳、和文英訳

ヨーロッパの言語学習での私たちの大きなハンディキャップは、日本語とヨーロッパの言語のちがいすぎる点にあるそうです。

そして外国語学習とは、その言語学習の神経回路を組織化することになります。

つまり、日本人は生まれつきヨーロッパ言語の神経回路をもっているわけではないことになります。

これは欧米人のように母国語の神経回路を利用して他のヨーロッパ言語を習得できるアドバンテージをもっているわけでもないことを意味します。

  • 英文和訳は、日本語の勉強であって英語の勉強ではない。

英文和訳は、英語を日本語で理解しようとする勉強方だそうです。

ところが、英語には、日本語にはない物の考え方があります。

たとえば、冠詞は日本語にありません。そのため英文和訳では冠詞にこだわる必要がなくなります。

  • 英文和訳では、英語の文の構造は学べない。

たとえば、「関係代名詞があるから、後ろから訳して…」というようなことをした覚えが、みなさんにはあると思います。

外国人は横文字の文章を、左から右、上から下へと読んでいくのとは反対に、

私たちの英文和訳では、右から左、下から上へと読んでいきます。

つまり、日本語の語順にしたがって目が右往左往することとなります。

そのため、これは英語の文の構造を学んでいるとはいえません。

  • 英文和訳は、英語を見たら、即座に日本語に訳す、という神経回路を作ってしまう。

何十年も、英語の勉強をしているのに、英語を話せないという人は、英語⇒日本語の太い神経回路をもっている人になるそうです。

または、

英文和訳で英語を教えているうちに、英語を見たら、即座に日本語に訳す、という神経回路ができあがり、そこに強烈な電流が流れ、英語を見たり聞いたりした途端、条件反射で英語を日本語に訳してしまう。

このような人は、英語を英語で理解できない。日本語に訳して、初めて英文の意味が分かったような気がする。

と著者は述べ、

仕事で英語を使う場合、いちいち和訳している暇はない。

英語は英語のままで理解すべきである。

と外国語を仕事で使う上でのアドバイスをしています。

外国語は暗記物

日本の教育のやり方は、暗記、暗記、暗記、のため外国語の勉強もただ暗記に思われてしまう。

しかし、外国語は暗記物ではない。

佐伯知義さんによれば、ヨーロッパの言語は、理屈で成り立っており、理屈が好きな人にはやさしい言語となっているようです。

つまり、ヨーロッパの言語学習には論理的に考えることが要求されます。

具体的にはどの単語が、主語か? 動詞か? 単数か? 複数か? 男性か? 単語と単語の結びつきはどうなっているのか? などどいった考え方だそうです。

辞書は何回でも引け!

佐伯知義さんによれば、“実際、辞書を引くことに生き甲斐を感じているのではないか?”と思えるほど、日本人は辞書をたえず引いている。

そこでの問題は、辞書を引くのに忙しくなり、単語を覚える暇がないことになります。

そして外国語の勉強で、もっとも時間と労力を必要とするのが辞書を引くことになるそうだです。

単語は文章とともに覚えるもの

文章の中で、その単語が、どのような意味で使われているのか? を知ってこそ、その単語が分かったといえるそうです。

単語を覚えることに関しての良きアドバイスは、

「辞書は何回でも引け」ではなく、「テキストは何回も読め!」

つまり、学習したことを何度も復習することが大切になってきます。

効率の良い科学的方法

それでは、科学的に外国語を学習する方法を結論だけシンプルにまとめてみます。

  1. 発音を学ぶ。(同じ教材の音源を毎日聞く。)
  2. 論理的に考える。(品詞、文中の機能、文の構造を考える)
  3. 練習問題を数多くやる。
  4. できるだけしゃべる。
  5. 書き取りをやる。
  6. 作文をする。

まとめ

これまでのことをまとめてみました。

  1. 外国語の神経回路の組織化
  2. 神経回路は復習で作られる。
  3. 発音を学ぶ
  4. 英語は英語で理解する。
  5. 論理的に外国語を学習する。
  6. 同じテキストを何度も復習する

本書では、外国語の神経回路を作っていくことが科学的な外国語の学習法であるとした上で、その方法を伝授しています。

ここで紹介したことはほんの一例になります

たとえば以下のように私たちが外国語を学ぶ上でぶつかる壁についても解説しています。

  1. 日本人が英語に弱い(TOEFLの成績)理由を解説
  2. 会話ができるようになるには、どのような勉強をしたら良いか?を科学的に説明
  3. ボキャブラリー(単語数)は、どれだけ必要か?
  4. 留学は必要か?

などなど、この他にも外国語を習得する上では絶対に欠かせない情報が数多く含まれています。

無駄な遠回りをせずに、最短で身につけたい。

科学的な根拠に基づいた方法で外国語を学びたい。

読めるだけではなく、話せるようになりたい。

そう思った人にとっては自信をもってオススメできる書籍です。

この本の評価
読みやすさ
(4.5)
面白さ
(5.0)
デザインの美しさ
(5.0)
値段
(3.0)
コレクション性
(5.0)
総合評価
(4.5)
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